花火と君と

 一瞬、小さな閃光を残して、花火の先はユナさんの手元から落ちた。
「あーあ」
 残念そうに呟く彼女を見ながら僕は噴出す。その横顔はとても六つも年上の見せる顔ではなかった。
「楽しかった?」
 僕が訊ねるとユナさんはこくりと頷いた。「ありがとね」彼女は笑っていう。
「こんな主婦につきあってくれて」
 花火をバケツに入れながら僕はもう一回笑った。
「旦那と喧嘩したらまた遊ぼう」
 彼女は僕の想いになんて気づいてないんだろうな、と思う。僕らをなでる風はすでに秋のそれになっていた。