夏服

 ドアを一枚隔てた向こう側にあなたの気配を感じた。
 私の家の前で、ノックすべきかどうか悩んでいるのだろう。やっぱり昨日の喧嘩を引きずっているんだ。私は玄関先で、無言のドアを見つめた。ドアを、ノックして。私は、去年あなたのくれた夏服姿でまっているから。優しく二つ、ノックして。その時私は、笑顔で扉を開けるから。
 もうすぐ夏が訪れる。