バックミラー

 ふと目線を上げると、そこに懐かしい顔が小さく見えた。信号待ちの車内。
 バックミラーに映る、一台後ろの車とハンドルを握る彼女の顔。僕に気づいているはずもないのに、肩から両腕にかけて硬直した。同じように信号を待つ彼女は髪の毛も長くなり、化粧も以前よりうまくなっている気がした。やがて青にかわると同時に僕はアクセルを踏み込み、ハンドルを左へ切る。彼女はそのまま直進し、バックミラーから消えた。