とにかく無性に

 彼を見る度に、濡れる。年下のくせに、私より弱いくせに、どうしてだろう。私の体は、彼が近くにいるというだけで、とても口ではいえないような有様となる。これじゃあまるで、なんとかの犬と一緒だ。だけど彼に対しての特別な想いを、本人へ伝えたことはない。いつも無関心を装い、お互いのバランスを保っているのだ。部屋からでると、丁度彼も隣室からでて来たところだった。
「おはよ。姉貴」
「おはよ」
 私は今日も、己の感情に鎖を巻く。