生きる場所

「パパ。ポチ、死んじゃったの?もう逢えないの?」朝早く息を引き取った愛犬の亡骸を撫でながら息子はしゃくりあげるように泣いた。私は息子の頭を撫でながら、そうだよ、と答えた。「でもね、ポチは消えてなくなったわけじゃないんだ」息子が振り返り私の顔を覗き込む。「ポチはね、生きる場所が変わっただけなんだよ。だから、消えたわけじゃない」その時の私の慰めを、息子はどんな気持ちで聞き入れ、どんな形で理解したのだろう。彼はただだだ渡しにしがみつきながら泣いた。やがて泣き止むまで、ひたすら泣き声をあげていた。end